1.BIM・CIMとは?
BIMとはBuilding Infomation Modelingの略で、元々は建築分野において三次元モデルを活用して事業全体の効率化をはかるものです。
CIMとはConstruction Infomation Modelingの略で、土木分野において三次元モデルを活用して事業全体の効率化をはかるものです。
それぞれの内容を子細に検討すると、定型的な部品使用が多いBIMと現地製造であまり定型的な部材を使わないCIMでは、使用するソフトウエア等が異なったりするわけですが、大まかな方向性を考えると共通点も多いためなのか、2018年以降地形や構造物等の3次元全体をBIM・CIMと表記しています。
なお、公式文章等では”BIM/CIM”のような表記になっていますが、本稿では”BIM・CIM”と表現します。
2.BIM・CIMの目的は?
2.1生産性向上を目的とします。
フロントローディング
設計段階に詳細な三次元モデルを作り、その後の施工や維持管理に活用していく方向であり、管理の一元化による効率化が期待できます。
コンカレントエンジニアリング
設計段階から施工、維持管理の知見を反映しようということで、一連の事業に関わる関係者との共同作業で意思決定を迅速に行う事が期待できます。
2.2合意形成や情報共有を目的とする
シミュレーション等を利用して正確わかりやすい情報伝達をめざし、3次元モデルをデータベースとして共有し、判断と合意形成の迅速化をはかることが期待できます。
3.具体的処理法
2023年4月から国交省のすべての直轄事業でBIM・CIMを適用することとなりました。発注者が活用目的を明確化して、受注者が3次元モデルを作成し、活用することとなります。なお、活用目的は発注者が義務項目と推奨項目から選択することになっています。
3.1義務項目
義務事項の例として以下のような例示が日経コンストラクション記事[1]にありましたので紹介します。義務事項は「視覚化による効果」を中心とした未経験者でも取り組み可能な内容であるようです。
3.1.1詳細設計段階
出来上がりイメージの確認~住民説明や景観検討が必要なとき
特定部の確認(2次元図面の照査)~複雑な箇所や既設との干渉個所などあるとき
3.1.2施工段階
設計段階の3次元モデルを活用している場合、以下のような項目も義務項目となるようです。
施工計画の検討補助
2次元図面の照査補助
現場作業員などへの説明
3.2推奨項目
「視覚化による効果」が必要な場合の他に3次元モデルによる解析など、高度なものは推奨項目となるようです。
3.2.1設計・施工段階
重ね合わせによる確認~複数情報を重ねて位置ずれや干渉の有無を確認するとき
施工ステップの確認~3次元モデルを使って一連の施工ステップで施工できるかどうかの検討を行うとき
3.2.2施工管理段階
GIS(地理情報システム)と3次元情報を組み合わせた施工管理~杭打ちが例として挙げられていました
1.4課題
活用目的の具体的詳細は2023年3月末までに決定されます。
現状ではBIM・CIMが原則義務化されるものは主に国土交通省案件という事になっています。ただ、手書き図面からCADへと移行した時のように、2次元CADから3次元CADへの業界としての移行も、国土交通省管轄以外でも、先進的な企業では促進されると考えられます。「自分のところはまだ対応しなくて大丈夫だ」と思わず、準備を検討する必要はあります。
現在の状況では、BIM・CIM活用にあたり、推奨項目の事例として施工段階でGISと組み合わせた検討が求められていることから、将来的には維持管理の段階でもGISとの組み合わせ活用の方向になるのではないか、と考えられます。このため単に3次元モデルを使える人材だけではなく、GISの知見を有する技術者の導入も検討項目となります。
BIM・CIMを業務に活用するにあたって、発注者が要求する活用目的に見合うように、必要なハード、ソフト、技術者の調達をコストとの兼ね合いを考慮して検討・実施する必要があります。