1級土木施工管理技士二次試験の施工経験記述について雑談

先日、1級土木施工管理技士二次試験を受けた人から相談がありました。彼いわく「1級土木施工管理技士二次試験で不合格だった。施工経験記述も文字数は埋めて書けたし、穴埋め問題はそれなりに埋めた。不合格の原因がわからないので、どうしたら良いか、参考書は何が良いか?」との事でした。

そこで施工経験記述について話をよく聞いてみました。すると施工経験記述で彼は以下のような事を書いたらしいことがわかりました。

潜水士として難しい工事を行った事を書いた。この難しい仕事の中でどれだけ自分が頑張ったかも書いた」。

この話を聞いて即座に思った事は、失礼ながら「これでは何年受けてもこの試験には合格しないだろうな」と言う事でした。

以下論を進める前に申し述べておくと、自分は7~8年ほど前に1級土木施工管理技士二次試験を1回受けただけなので、受験について偉そうな講釈は垂れられません。しかし一応合格はしているのでそれなりの回答を以下にしてみようと思います。

1.1級土木施工管理技士二次試験対策の心得について

そもそも1級土木施工管理技士二次試験の施工経験記述とは、受験者が1級土木施工管理技士を名乗れる程度の施工管理の知識と施工管理の経験を持っているかどうか、を確かめるためのものです。

したがって、試験問題に対しては、自分が十分に程度の施工管理の知識と施工管理の経験を持っているかを示して、試験官に納得を与える程度の解答を行わなければなりません。要は「自分が現場で頑張った。どうだスゲえだろ?」と言う答えを書くのではなくて、「自分には十分に程度の施工管理の知識と施工管理の経験がある。どうだスゲえだろ?」と言う答えを書いて試験官に読ませる必要があるという事です。

求められているのは作業員としての知識経験ではなく、施工管理者としての知識や経験であるという事を再認識する必要があるのではないでしょうか。

と同時に、これは「試験」なので、問題文をよく読んで「問題文に対する答え」を書かなければなりません。問題文に対する解答を素直にしていれば「自分は作業員として頑張った」等の感想文を書いている余地はないはずです。問題文をまともに読めない者は土木施工管理技士にはふさわしくないという事です。

2.施工経験記述対策

それでは具体的に令和4年の過去問を使って施工経験記述の対策を考えてみましょう。ただし、基本的に施工経験記述は最初からカリカリと書き始めてはいけません。最初にすべての問題文の項目について検討をして問題用紙のスミにでもその項目をメモしておいて解答の「流れ」を確認して、それから初めて書き始めましょう。

2.1[設問1]あなたが経験した土木工事に関し、次の事項について解答欄に明確に記述しなさい。(以下工事名、工事内容の記載をする)

ここでは自分が行った工事内容について記載します。他人が行った工事内容ではありません。正確に記載しましょう。意外にあいまいになりやすいのは⑤施工量記載の部分です。実際に行なった数量等を、事前によく把握しておきましょう。

2.2[設問2]問題文(当該工事の)現場状況から特に留意した安全管理に関し、次の事項について解答欄に具体的に記述しなさい。ただし交通誘導員の配置のみに関する記述は除く

ここから問題文が始まります。試験官が書いてほしい解答の内容は「安全管理」の件であるという事をしっかりと確認しましょう。試験官が書いてほしいのは「作業員としてのあなたの努力」ではなくて、施工管理者として行った「安全管理」について書くのだという事です。ここは大事な事なので重複して述べました。また問題文には「交通誘導員の配置のみに関する記述は除く」という条件がある事も確認しましょう。

2.3[設問2]問題文(1)具体的な現場状況と特に留意した技術的課題

さて実際に解答を始めましょう。問題文ではまず書くべきことは「具体的な現場状況」という事ですが、何も考えずに「具体的な現場状況」をすぐに書き始めてはいけません。とりあえず問題文を2回以上読むのです。すると問題文後半の「特に留意した技術的課題」、これをまず検討したほうが良いなと気づくと思います。

自分が工事を行った現場を思い出しましょう。工事を進めていこうとした時に、そのまま工事を進めていくと安全ではなくなるかもしれない状況はなかったでしょうか?ヒヤリハットはなかったでしょうか。それらはどんな現場状況のときに起こっていたでしょうか?それらを何項目か問題文のスミにでもメモ書きしましょう。

たとえば、あのとき現場では工期が遅れていたので、やむなく複数の工事を同一箇所で行ったら、作業が交差して接触事故が起きなねなかったよね、とか、あの時現場では軟弱地盤上でクレーンを設置して作業を行う必要があって、このためにクレーンの転倒事故が起こりかねない状況もあったよな、とか、いろいろあるのではないでしょうか。

基本的には課題の抽出は「多面的」な視点で進めると良いと思います。「多面的」とはいわゆる「ヒト・モノ・カネ・安全・持続性」といった視点から見るという事です。その中で最も重要(それを放置すると重大な結果になりかねない)な事項を「特に留意した技術的課題」として書きます。

ここで注意する事は、答案用紙には単に「特に留意した技術的課題」の一点のみを書くのではなく、多面的検討をした事項についても軽く書いておく事です。試験官に「自分は多面的な視点で課題抽出をしているよ」という姿を見せるのです。

特に留意した技術的課題について書く内容が決まったら、それに合わせて最初に具体的な現場状況を書き、続けて特に留意した技術的課題を書きます。

ここではとりあえず以下のようにしておきましょう。最初に具体的な現場状況を書いてから以下のように進めますか。


当現場では工期が迫っているため、作業が輻輳して接触事故等が起きる可能性もある。しかしそれ以上に放置しておくと重大な結果を招きかねない点がある。それは軟弱地盤上でクレーン作業を行う必要がある事だ。この作業を安全に進めるためには、軟弱地盤であるこの状況をどう克服するか、が施工上特に留意すべき課題となった。


なお、別にこれらは試験会場で思い出さなくとも、事前に出題予測を立てても良いと思います。つまり施工経験記述で書かされる内容は、工程管理、品質管理、安全管理、出来形管理のローテーションになるのでしょうから、事前に各項目について数点準備しておけば、試験会場で思い出すより効率的だということです。

さらに言うと、ここでは総合的な視点から現場での多様な作業を示してから安全面の課題抽出を行ってみましたが、これに囚われる必要は全くありません。たとえば最初に作業一つを示して、その安全面の課題を複数抽出し、そこから特に留意した技術的課題を導いても良いのです。安全管理に詳しい方ならばこちらの方が本筋かも知れません。要はあなたの経験や知識に応じて解答するパターンはいくらでもあるという事です。

2.4[設問2]問題文(2)技術的課題を解決するために検討した項目と検討理由及び検討内容

さて本問は1級土木施工管理技士二次試験の施工経験記述試験の花形になります。ここであなたの施工管理を行った経験や、業務を行う中で深められた知識を表現して試験官に「自分には十分に程度の施工管理の知識と施工管理の経験がある。どうだスゲえだろ?」と思わせるところです。

さあ、いよいよ課題の解決策を2~3点挙げてその検討状況を書き進めて行きましょう。

たとえば、軟弱地盤の現場でクレーン作業をしなくちゃならないので、クレーンが倒れないように、①事前に地盤の表層混合処理をしてしまう②鉄板を敷いて作業をすすめる③排水用のかま場を作って作業をすすめるなど(今書いたものは完全に思いつきですがw)解決策として検討した項目を複数用意します。

そしてそれぞれの選定理由を作ります。そして検討内容を書きます。この検討内容を書く際に、例えば表層混合処理であれば地盤は粘性土であるので石灰系での混合処理を検討したが、この工法では養生期間が必要となるため、工期に影響が出るおそれもある等、「自分はこれほど深く検討しているんだぞ」と言う内容を書いていくわけです。ここが最大の見せ場です。

2.5[設問2]問題文(3)上記検討の結果、現場で実施した対応処置とその評価

上で検討した結果、クレーン作業場所周囲に鉄板を敷いて作業を行う事が経済的であり、技術的にも妥当であると判断して鉄板を敷いて作業をすすめることで安全面の課題を克服したと仮定します。実際の敷設作業の際には、施工した鉄板の枚数なども、施工数量と整合するように具体的に示すと良いでしょう。さらにクレーンの設置予定位置を確認し、アウトリガー最大張り出しに対応する部分にも鉄板を敷いておいたなど、「心の底から安全について考えながら施工してますよ」とばかりにサラリと書いておくとなお良いでしょう。またクレーン操作時にアウトリガーの動向を監視する人員を配備したなど、施工事に行っていれば具体的内容を書けそうですね。

要は、検討した結果行われた対応処置は、大むこうを唸らせるような立派なものではなくとも良いと言うことです。「普通はそうするよね」でも良いのです。重要な事は自分なりに検討をした結果そうなったと書く事です。

以上を書いた後、「こうして軟弱地盤におけるクレーン作業を安全に行う事ができました。めでたしめでたし」と締めておけば良いのではないでしょうかw

また評価については、①今後の作業への波及効果や②その作業を行う事で新たに発生し得る安全面のリスクがあると思います。今後同様な作業を安全に行う際の参考のためにマニュアル化したとか、鉄板敷設の際、作業員が鉄板の下敷きになるなどの事故が起きないように鉄板敷設の作業ルールを定めたなど、書ける要素はたくさんあると思います。

世の中では「鳥の目」「虫の目」「魚の目」なんて事が言われます。「鳥の目」とは全体を俯瞰できる視点、「虫の目」とは細部を確認できる視点、「魚の目」とは流れを把握できる視点と言われます。

施工管理者に必要な事は、「鳥の目」「虫の目」「魚の目」の視点でバランスよく見ていく事です。解答全体を通じてその点が表現できれば最高ですね。

3.自分が使った参考書と使い方

自分が使った参考書は『これだけで合格1級土木施工試験講座』(2010年5月10日、大野春雄、日本理工出版会)、まさにこれ1冊でした。経験が足りない部分は知識で埋めるしかないよね、ということでこの本の「ポイント」と書かれたまとめ部分の項目を眺めていました。練習問題等は一切やっていません。

本にあった「ポイント」を他人に説明するように一人でエアー講義をやっていました。エアー講議とは、本で学んだ内容を内容を目の前に仮定した空想の相手に「講義」をする練習です。(自称)

エアー講議を何度も行っていたら、何となく本の内容を記憶することができました。単に本を読んだだけだと、覚えた「つもり」にはなるけれども、実際に記憶できたかどうかはわかりませんでした。


上で私が示した例でも判るように、私の答案対策なんてものも100点満点のものではありません。でも、それで良いのです。資格試験は、たとえ最低点であっても合格点を上回ってさえいれば良いのですから。

そう考えると、試験対策も気持を楽にして進めて行けるのではないでしょうか。

以上、雑談をつらつらと書きつらねました。失礼しました。

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