1.液状化に対する具体的処理法にどんなものがありますか?
前回は液状化のメカニズムについて見ました。
地盤の液状化はどうして起こりますか?その対策は?~その1メカニズム編
今回は液状化に対する具体的な処理法について述べます。まず前回示した具体的な処理方法のメモ書きを章番号をあらためて記載した上で具体的に述べていきます。なお、以下に記載したものは学習の進捗によって後日訂正や加筆等がある可能性があります。
本稿は[1]港湾工学(港湾学術交流会)および[2]港湾工事施工ハンドブック(空港港湾総合技術センター)を参考にして文章を作りました。
2.サンドコンパクションパイル工法
ゆるい砂地の状態を改善するためのサンドコンパクションパイル工法について以下に述べます。
【現況】
間隙比の大きなゆるい地盤である。
【対策の考え方】
軟弱地盤の中に良く締まった砂杭等を設置して上部構造物の加重をその砂杭等に支持させることで問題解決をはかる。
【サンドコンパクションパイル工法概要】
サンドコンパクションパイル(SCP)工法の目的は砂杭を形成して上部の構造物の荷重をその砂杭に集中して支持させ、主として強度の低い粘性土に作用する荷重を少なくする事にあります。
工法はバイブロハンマーを振動させながらケーシングパイプを打ち込み、それに砂を入れて振動させながら締固めてパイプを抜いていく方法となります。SPCの改良仕様は置換率で表すことができます。置換率は、砂杭の断面積を砂杭1本が分担する面積で割ったものです。
【この工法の改良原理と置換率】
SPC工法の改良原理と一般的な置換率は以下の通りです。[2]2-2-24
粘性土の場合、改良原理は砂杭と粘土からなる複合地盤をつくり圧密時の排水を補強することです。一般的置換率は0.25から0.80です。
砂質土の場合、改良原理は締固めとなります。一般的置換率は0.05から0.30です。
【施工上の留意点】
SPC打設によって地盤の盛り上がりが発生するので、その処理方法を検討する必要があります。また、作業時に振動や騒音が発生するため、現場周囲への影響を確認する必要があります。
【使用船舶】
SPC船(SPC打設)、ガットバージ(材料砂供給貯蔵)、揚錨船(SPC船の投錨揚錨作業)、その他必要に応じて砂貯蔵船、砂貯蔵船の曳舟。また場合によって警戒船も必要となるでしょう。
【施工手順】
①事前深浅測量②回航現場入場③施工位置セット④キャリブレーション⑤材料砂搬入⑥SPC打設⑦事後深浅測量⑧チェックボーリング
④キャリブレーション~SPC工法では最終的な出来形を目視で確認できないため、施工管理計などを用いて施工管理が行われるため、それら機材が正常に稼働しているかどうかを確認します。
⑥SPC打設時にはオシログラフで打設記録が出力されます。オペレーターは施工管理計に注意しながら打設を行います。
3.サンドドレイン工法
排水を円滑にすすめる目的で行われるサンドドレイン工法について以下に述べます。
【現況】
排水に時間がかかる(透水係数が小さくて排水距離が長い)
【対策】
軟弱土層の水分を透水係数が高い砂やレキで排水経路を作り除去して地盤強度を上げることで問題解決をはかる。
【サンドドレイン工法概要】
サンドドレイン工法は、改良対象となる粘性土地盤上に(1)透水性がある砂の層を敷き、(2)そこに透水性のある砂杭を打設し、(3)その地盤上に砂等によって荷重をかけることにより、(4)その荷重で粘土層の中にある水を砂杭を通じて徐々に絞り出して(5)地盤の強度を高める工法です。
要するに砂層や砂杭で水路を作っておいて上から荷重をかけて地盤の水を絞り出して強度を高めるというものです。サンドドレイン自体による強度は期待できませんが、排水を促進することで地盤そのものの強度が上昇することが期待できます。
1回の施工で100%圧密が完了するのではなく、段階的に盛土~圧密放置(地盤強度増加)を繰り返していく事になります。港湾では一施工段階の圧密度を80%程度とすることが多いそうです。[2]2-2-7
【使用船舶】
敷砂船(グラブ付自航運搬船など)、サンドドレイン船、ガットバージ(材料砂供給貯蔵)揚錨船(サンドドレイン船の投錨揚錨作業)、その他必要に応じて砂貯蔵船、砂貯蔵船の曳舟。また場合によって警戒船も必要となるでしょう。
【施工手順】
①敷砂工②回航現場入場③施工位置セット④キャリブレーション⑤材料砂搬入⑦サンドドレイン打設⑧造成ドレイン合否確認(NG判定)⑨埋立・載荷工
①敷砂工程では、排水路をつくるというこの工法の性質上、砂層厚の管理が重要となります。一般的には1~2m程度の厚さを維持する必要があります。
④キャリブレーション~サンドドレイン工法では最終的な出来形を目視で確認できないため、施工管理計などを用いて施工管理が行われるため、それら機材が正常に稼働しているかどうかを確認します。またケーシングパイプが本当に所定の位置まで貫入するかどうかを事前に試験を行って能力確認を行います。
⑧造成ドレイン合否確認(NG判定)~造成したドレインがNGであるかどうかをオシログラフにより判定します。
4.深層混合処理工法
地震のせん断変形に対応した強固で安定した地盤をつくるための深層混合処理工法について以下に述べます。
【現況】
地震により大きなせん断変形が起こる。粘着力のない砂やレキの層である
【対策】
地盤の中に強度がある材料を注入・混合させて地盤全体あるいは壁状にして強度を高め、地盤のせん断変形を抑制することで問題解決をはかる。
【深層混合処理工法概要】
深層混合処理工法は、改良対象となる粘性土にセメントミルク等の固化剤を注入しながら地盤を撹拌して混合・固化する工法です。改良対象全体について行うブロック式と、改良対象の一部に壁や格子をつくる壁式・格子式、ほかにも杭式などがあります。
【使用船舶】
深層混合処理専用の処理船(海外では台船に処理装置を艤装して使うケースもあるそうです)、場合によって警戒船も必要となるでしょう。
【施工手順】
①室内配合試験②施工計画③準備工④キャリブレーション⑤試験工⑥本工事施工管理⑦深浅測量⑧チェックボーリング
①室内配合試験とは、現場での水セメント比、使うセメント量、使う添加物やその量を決めるために行います。
②施工計画では作業船選定、施工方針、工程計画を定めます。
④キャリブレーションでは処理専用船にある管理機器の信頼性を確認するために行います。
⑤試験工とは、本施工前に各機器の事前確認をするために行います。
[2]港湾工事施工ハンドブック、空港港湾総合技術センター、平成28年9月、第2章地盤改良工(2.1<2-2-1>~2.7<2-2-37>)