建設産業の担い手確保について

前回は少子高齢化について述べました。 少子高齢化について

今回はそれに関連した事項として、建設産業の担い手確保について述べます。

【ご注意】

基本的には「技術士建設部門最新キーワード100」[1]の記述を元に以下に述べます。

「0背景と現状把握」「1課題抽出」「2解決策提示」「3評価」「4技術者倫理」の順で述べる予定ですが、学習の進捗状況により、各項の内容を後日追記していく形となる事もあります。(追記なしでそのまま終わらせる場合もあります)

【ご注意おわり】

0.背景と現状把握

建設業全体で見ると建設産業全体の就業者数は、ピーク時の1997年を100とすると、20年後の2016年には72まで減少しています。ちなみに2021年時点では70まで減少しています。今はピーク時に比べて3割減った状況だということです。

さらに建設業全体の年齢構成を見ると、2021年時点で55歳以上が35.5%、29歳以下は12.0%ということです。これからもわかるように、高齢化の度合いが強いことが建設業界の特徴であると言えます。

以上のように、建設産業の就業者数においては、その就業者数が年々減少した上に若年層が少ないことが大きな問題となります。これら建設業の担い手を確保するためにはどうしたら良いのでしょうか?

1.課題抽出

担い手減少問題を解決する事を阻む要因として以下のようなものが考えられます。

1.1適正な給与体系ではない

下請け等の場合、給与が中抜きされて経験や労働に見合った給与が支給されていない、残業代が支払われていない、といった現状があります。それらが、就業に踏み込めない、就業してもすぐに離職してしまう原因となっています。

1.2適正な休暇が取れない

業界の特質として、会計年度末は工事が集中したり、給与が日給であるため土曜日も働かざるを得ないという現状があります。それらが、就業に踏み込めない、就業してもすぐに離職してしまう原因となっています。

1.3建設業そのものに希望を見出せない

「旧態依然、雑然とした工事現場で危なっかしい事をしながらハイテクとは無縁そうな「親方」が怒鳴りまわしている」・・・建設業界というと「3K」(きつい、汚い、危険)というイメージがあり将来への展望がなさそうにみえる、といった現状があります。それらが就業に踏み込めない、就業してもすぐに離職してしまう原因となっています。

2.解決策提示

以上の要因を踏まえた解決策を以下に提示します。

2.1適正な給与体系のための方策

適正な給与体系を保証するために、技能労働者個々の経験や能力に見合った処遇が受けられるためのシステムとして2019年から建設キャリアアップシステム(CCUS)が稼働しています。一般土木工事で、建設キャリアアップシステム(CCUS)の達成状況に応じて成績評定を加点(場合に応じて減点)しています。

なおCCUSシステムについて補足すると、実際にCCUSシステムを稼働する場合、下請として働いてくれている協力会社の下位の下請問題(「現場入場可能なのは二次下請けまで」等の「現場による縛り」を受ける場合も出ている)や一人親方等の問題点も浮き彫りとなります。これらの問題は当システムを運用していく中で克服されていくものと思われます。


また、下請け会社にて適正な給与体系を確保するために、国土交通省では下請け会社からの労務費見積を尊重する企業については総合評価落札方式や成績評定で評価をしています。

2.2適正な休暇を確保するための方策

適正な休暇を確保するために、以下のような施策が実施されています。

国土交通省では「週休2日対象工事」の発注をおこなっています(2021年以降はすべての工事公告で実施)。ここでは週休2日の実施状況に応じて労務費を補正し、成績評定を加点(場合に応じて減点)しています。

また工事の休日や天候等のファクターを考慮した「余裕時間制度」の活用を示した「直轄土木工事における適正な工期設定指針」を2020年3月に公表しています。

また次に述べるi-Constructionの一環としての施工時期の標準化等の動きもあります。つまり会計年度末に集中していた工事の施工時期をずらして発注するなどして工事の集中を避ける動きです。これにより「年度末は休日なし」で働くといった事態が回避できます。

これらは国土交通省自身に関わる工事における施策ですが、先進的な一般企業でも今後この例を踏襲することが期待されます。

2.3建設業界に希望を与えるための方策

国土交通省ではi-Constructionを推進しています。建設産業の生産性を向上させるために、情報化施工やBIM・CIM活用、ICT活用、施工時期の標準化等が主な柱です。また国交省では中長期の工事発注の見通を公表しています。

旧態依然とした工事現場ではなく、ハイテクを活用した夢のある現場とすることで、建設業界で希望を見出せる環境を構築して実施し、それを可視化していく事は重要です。

参考
[1]2022年版 技術士第二次試験 建設部門 最新キーワード100 ,西村隆司,日経コンストラクション

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