海洋港湾構造物維持管理士試験の難易度は?その対策は?

1.受験資格や試験の日時

まず、受験資格としては、今年も8月くらいに広告がされると思いますが、昨年の場合だと以下のように広告されていました。(この記事記載は2013年2月。)

「資格認定試験の受験資格は、次のいずれかの条件に該当する方とします。
(1) 海洋・港湾構造物の調査、設計、工事、管理に関する業務(研究・開発を含む)に通算7年以上の実務経験を有する方。
(2) 技術士(建設部門)または1級土木施工管理技士の資格を有する方。
(3) 公益社団法人土木学会が認定する特別上級土木技術者、上級土木技術者、
公益社団法人日本コンクリート工学会が認定するコンクリート診断士、
一般社団法人日本鋼構造協会が認定する土木鋼構造診断士、
公益社団法人プレストレストコンクリート工学会が認定するコンクリート構造診断士、
一般社団法人建設コンサルタンツ協会が認定するシビルコンサルティングマネージャー(RCCM)、
一般財団法人沿岸技術研究センターが認定する海洋・港湾構造物設計士の資格を有する方。」[1]

昨年は試験は11月初旬に、東京・大阪・福岡・札幌の会場で行われました。受験料は11000円でした。

2.試験内容・難易度考察

2.1試験内容と難易度考察

また、試験内容は以下のように広告されていました。

「【択一式】および【記述式】とも出題範囲は以下の通りです。

・海洋・港湾構造物とその維持管理全般に関する知識
・関係法令に関する知識
・海洋・港湾構造物の変状等に関する知識
・技術者倫理
・点検診断を計画・実施・判定する知識、技術
・総合評価を実施する知識、技術
・維持工事を計画・設計・実施する知識、技術
・改良工事を計画・設計・実施する知識、技術」

具体的な試験の過去問はhttp://www.cdit.or.jp/certificate/old-test.htmlにて公開されています。

昨年の例だと択一式は20問、記述式は2題(問題Ⅰは1問必須、問題Ⅱは3問中2問選択)でした。

2.2択一式の内容と難易度

昨年の択一式問題は以下のような出題でした。概略してみます。[2]

技術上の基準(問01)、維持管理告示(問02)、点検診断計画(問03)、技術基準対象施設の維持管理(問04)

これら4問は法令関係の問題でした。基本的には過去問を検討すれば対応可能だと思います。できれば港湾の施設の技術上の基準を熟読するのが望ましいとは思いますが、全部で4000頁以上あるものを読了するのは困難でしょう。

その他には以下のような問題が出ました。

水深測定水中部点検調査(問05)、水域施設維持管理(問06)、ケーソンの変状連鎖(問07)、コンクリートの劣化機構(問08)、コンクリート部材の鉄筋腐食(問09)、鋼材腐食(問10)桟橋変状発生要因(問11)、無防食鋼材の腐食速度分布(問12)、コンクリート構造物劣化の予測推定(問13)、陽極寿命の耐用年数(問14)、塩害鉄筋コンクリート断面修復(問15)、桟橋上部コンクリート補強工法(問16)、岸壁桟橋の防食法(問17)、海岸保全施設の維持管理(問18)、海浜形状の変化の要因(問19)、洋上風力発電設備(問20)

〇択一式試験の難易度

択一式試験の難易度は、受験者の立場によって異なると思います。

例えば防食関係の人が受験した場合、防食関係の問題は簡単に解くことができると思いますが、コンクリート関係を知らないとそれら関連問題は難しいと感じると思います。また防食関係中心の仕事のみをしている場合、海岸関係の調査等に関与していないので、昨年出題の最後の3問は難しいと感じると思います。

逆にコンクリート関連の仕事をしている人にとっては防食関係の問題は難しいと感じるのではないでしょうか。さらに海岸関係の調査等に関与していない場合は、防食関係者同様に昨年出題の最後の3問は難しいと感じると思います。

2.3記述式試験の内容と難易度

記述式試験は大きく分けて問題が2題出されました。問題Ⅰは1問の必須問題でした(800字以上1000字以内)。また問題Ⅱは3問中2問選択(それぞれについて800字以内=合計1600字以内)でした。

〇問題Ⅰの内容と難易度

昨年の問題Ⅰは防災減災に取り組む観点から既設構造物維持管理にて想定される問題と対応策について述べるよう求められていました。単に維持管理士になった際の決意を聞くのではなく、設定条件下で起こり得る問題とその対応が問われていました。問題文にある「構造物の老朽化」「地球温暖化」といった解答へのヒントを踏まえながら解答を考える必要があったように思います。難易度としては維持管理調査の実務を多数こなしていればそれほど難しいとは思えませんが、問題文の指示に沿って解答を進めていく技能は必要でしょう。

〇問題Ⅱの内容と難易度

以下は選択問題です。

(1)は桟橋整備の上部工の維持管理レベルをⅠとする場合とⅡとする場合の設計時の検討内容と留意点を維持管理を考慮した視点で書きなさいと言う問題でした。
(2)は矢板式岸壁の鋼材電位を計測したら防食管理電位が維持されていなかったので、その原因を検討し調査と対策の内容を書きなさいと言う問題。
(3)はケーソン式防波堤の一部消波ブロックが高波浪で沈下散乱し、上部工やケーソンが損傷した時の詳細臨時点検診断の内容を留意点を書きなさいと言う問題でした。

率直に言って実務をやっていればそれほど難しい問題ではなかったのではないかと思います。逆にそれぞれをどうやって800字以内にまとめるか、と言ったところが問題となったような気がします。

3.試験の対応策

では具体的な試験対応策を提起します。「自分の場合こうやった」と言う話になりますので、科学的な根拠はないですが参考までに。

3.1 過去問をやってみる

まずは過去問をhttp://www.cdit.or.jp/certificate/old-test.htmlからダウンロードして、実際に問題を解いて、書いてみると良いです。こうすることによって自分が知っていたことと知らなかったことが明らかになります。

3.2 不得意分野を書籍からの知識で克服する

自分が知っていたことと、知らなかったことが明らかになれば、次は自分の得意不得意分野を考えます。
多くの場合「2.2択一式の内容と難易度」で述べたように全部で20問ある択一試験の場合、受験者の職業や立場によっては得意不得意の分野が出てくると思います。

そこで試験時期前に不得意分野につい「予習」をしておくことは有益だと思います。自分も試験前の期間に行っていました。自分はコンクリート系も防食系も不得意分野だったので、両方を「予習」しました。参考書としては以下のようなものがあります。

〇コンクリート方面が不得意の人
港湾コンクリート構造物補修マニュアル」平成30年7月,沿岸技術ライブラリー No.50,https://book.cdit.or.jp/book/detail/115

〇防食関係方面が不得意の人
港湾鋼構造物防食・補修マニュアル(2009年版)」平成21年11月,沿岸技術ライブラリー No.35,https://book.cdit.or.jp/book/detail/23

〇なお不得意分野の有無にかかわらず、以下のマニュアルは必携だと思います。自分の場合は、これを常に参照していました。
他の書籍を導入しないにしても、このマニュアルだけは今から導入しておきましょう。そして概略を眺めながら、少なくとも夏くらいまでに一通り書いてあることが頭に入っていれば最高です。

港湾の施設の維持管理技術マニュアル(改訂版)」平成30年7月,沿岸技術ライブラリー No.49,https://book.cdit.or.jp/book/detail/114

3.3 過去問の解説を勉強しよう

とりあえず参考文献を用意して、これをパラパラと読みながら、過去問についてもう少し掘り下げましょう。具体的には、海洋港湾構造物維持管理士会(http://memphis-kai.com/)では過去問の解説資料を会員に公開しています。これを検討しましょう。

海洋港湾構造物維持管理士会は資格保有者でなくとも「準会員」として無料で会員になれますので、会員登録をして関連資料をゲットして検討しましょう。

3.4 海洋・港湾構造物維持管理基礎講座講習会を受講しよう【重要】

毎年試験前に海洋・港湾構造物維持管理基礎講座講習会が開催されます。開催に関する告知は、去年の場合だと7月に沿岸技術研究センターの資格制度ページ(https://www.cdit.or.jp/certificate/iji-index.html)にありました。(受講料は昨年は13200円だったようです)

率直に言って、海洋・港湾構造物維持管理士資格認定試験に本気で合格したいなら、この講習会は必ず受けましょう

講習会に参加すると講演資料をもらえます。「3.2 不得意分野を書籍からの知識で克服する」で収集した文献はその範囲が広いと思いますが、講習会に参加するともらえる講演資料は資格試験寄りにフォーカスが寄っています。講習でもいろいろな知識を教えてもらえます。


以上、つらつらと海洋・港湾構造物維持管理士資格認定試験について語ってみました。

参照
[1]2022年度 海洋・港湾構造物維持管理士資格認定試験のご案内,https://www.cdit.or.jp/o_lecture/kaiyou_shikaku_2022.html,
[2]海洋港湾構造物維持管理士 過去の試験問題(択一式、記述式),https://www.cdit.or.jp/certificate/old-test.html

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